固定観念が裏切られるのがおもしろい【絵本作家インタビュー】ザ・キャビンカンパニーさん

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絵本『にょっ!』の作者ザ・キャビンカンパニーさんは、今、大注目の2人組、阿部健太朗(左)と吉岡紗希(右)の絵本作家ユニット。廃校になった小学校を素敵なアトリエに改装し、絵本制作に励むお二人を訪ねてきました。

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ぴっかぴか絵本シリーズ
『にょっ!』
さく:ザ・キャビンカンパニー
小学館・刊

詳細は、こちらのページをご覧ください

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■『にょっ!』は子どもたちと一緒に盛り上がれる絵本

―――『にょっ!』の海と空。とても独特で美しい色味ですね。

阿部 いやぁ、難しかったです。
吉岡 ほんとに。私1回、泣きましたもん。不思議な夢に迷い込んだような空の色が出したかったのですが、これが今までの描き方だとイメージどおりの色味に全然できなくて。
阿部 半分ぐらいまで描いたけど、違うな、最初から描き直そう、と。それで、まったく違う方法で描いてみることにしたんです。
吉岡 ベニヤ板全面にアイボリーのアクリル絵の具を塗って、その上から、サーッとうすーく海と空を塗って。もうほとんど水で描く感覚ですね。下塗り段階で偶然いい色が出たので、今度は意識的にやってみるけど、やっぱりその偶然にはなかなかならなくて試行錯誤しました。
阿部 そうそう、一発勝負だから、何枚もベニヤ板を使うことになりましたよ(笑)。
吉岡 でも、神秘的な雰囲気も出せたし、またひとつ絵本の幅が広がったようで、ほんとよかったです。
阿部 できあがった『にょっ!』を、子どもたちへの読み聞かせで見せたのですが、第一声で「わあ、きれい」と言ってもらえて、ほっとしました。

―――絵本の読み聞かせやワークショップをよくやっていらっしゃいますよね。

阿部 ワークショップは月に1回くらいのペースでやっています。子どもたちとは、対等な友達っていう感じですね。子どもたちとしゃべっている時間がいちばん好きかも。
吉岡 1年生はいちばんかわいいかな。大学のときに教育実習で1年生を受け持ったんですけど、ほんとに素直でみんなかわいかった。美術の授業をしたんですけど、『100かいだてのいえ』をみんなで描いたんです。いつも読み聞かせで聞いている絵本を自分たちで作るとあって、盛り上がりました。
阿部 僕は2年生で、図工をやったんですけど、大失敗でした(苦笑)。お面を作ろう、という授業だったんですけど、とにかく材料をいろいろと集めて、絵の具もそろえて、「さあルールはなしだ、好きに作っていいよ」とやったら、みんな一つ目お化けしか作らなかった。ルールがなさ過ぎると、どうしていいのかわからず、隣の人のを真似するんですね。1人が一つ目を作ってすぐ終わったら、「おれも早く終わらせよう」の連鎖になっちゃって。その苦い経験が、今のワークショップには生かされていますね。
吉岡 まず、お手本のクオリティをすごく高く作る。
阿部 そして最初に、「これどうやって作ってると思う?」と尋ねるんです。すると、何の材料が使われているかよく見るし、そういう素材も使えるんだって気づくんですよね。
吉岡 そうすると、子どもたち自身の作品作りでもあれこれ考えたりやってみたりして、どんどんよくなるし、達成感も出てくるんです。
阿部 子どもたちは、考え出すとおもしろいことを言うけど、やっぱりちょっときっかけをあげないと、おもしろいことになっていかないっていうのが図工の授業でわかりましたね。

■固定観念を裏切られるのがおもしろいと思う

―――『にょっ!』で子どもたちに伝えたかったことは?

吉岡 『にょっ!』の読み聞かせをやったときも、最初のお題のシルエットを何だと思う? という質問に対して、子どもたちは案の定「クジラ!」と。でも、ページをめくって、人魚やらカブトムシやらが出てくると、「えーっ!」って驚いて。
阿部 ちょっと時間が止まるんですよね。そして考える。「カブトムシ、海にいないだろー」っていうツッコミにも、「かもよ?」と言いながら、また次のページに。そのうち、新しい見方がわかってくると、もう次々と、こっちが考えもしなかった答えを言ってくるようになります。
吉岡 だからホントに、読みながら一緒に遊んでいる感じですね。読み聞かせが盛り上がる絵本が作りたかったので、子どもたちのこの反応は嬉しかったですね。
阿部 僕もそうだけど、みんな結構、固定観念で見てしまうことが多いでしょう。見た目で判断してしまったり。でも、ほんとにそうかな? と、本自体が質問してくる絵本を作りたかったんです。質問に答えると、その想像をいい意味で裏切られる、そしておもしろさが増していく、というのが描きたかった。
吉岡 知ってるつもりのものでも、見方を変えると違ってくる。好きじゃないって思っていたものも、考え方が変われば、もっと見てみようと思う。この絵本が、そういうきっかけになればいいな、と思います。

写真/細川葉子 取材・文/田中明子(本誌)

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Profile•ザ・キャビンカンパニー

阿部健太朗と吉岡紗希の絵本作家ユニット。共に1989年大分県生まれ。
大分大学教育学部卒業後、画家・絵本作家として幅広く活躍。『だいおういかのいかたろう』で日本絵本賞読者賞を受賞。2013年に結婚し、2016年、女の子が誕生。

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『小学一年生』2017年4月号表紙

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